夕書房設立から5年目を迎えました。
きっかけは、2011年の東日本大震災でした。社会の仕組みに無自覚だったことへの反省、また日々押し寄せる得体の知れない「情報」への懸念から、個人の体験に基づく、地に足のついた言葉や表現を広く伝え、残していこうと、細々ながら出版活動を続けてきました。
それから4年が経ち、今、社会はさらに大きな岐路に立っています。どう考えたらいいのか頭を抱えてしまうような、かといって決して見過ごせない状況が次々と現れては、整理できないままに過ぎていく。そんな状況に再び恐ろしさを感じています。
4年間、著者の方々と二人三脚で進む中で実感したのは、「本は成長する」ということでした。出版した本が読者の手にわたり、読まれる中で新たな対話が生まれ、思いがけない動きへと発展することもありました。
かれらと一緒なら、今目の前にある社会の問題について読者とともに深く考え、発信していけるのではないか。社会の主体を私たち一人ひとりの手に取り戻していく、その手がかりを得る場所、生き延びるための語りの場を作れるのではないか。
そう考えて、このたび、オンラインでの連続講座を立ち上げることにしました。
夕書房やその著者たちが今気になっている社会問題についての対談を中心に、作品の世界観を伝える講演やワークショップも織り交ぜて、本を媒介に世界への認識をさらに広げる刺激的な講座を定期的に開催していきます。
ここでの議論から、また次の展開が生まれるかもしれません。
今の社会にモヤモヤしている人、考えるヒントが欲しい人、そしてともにゆるやかに連帯していける人のご参加をお待ちしています。
夕書房・高松夕佳
参加方法
本講座は、ビデオ会議システム「Zoom」のミーティング機能を使って行います。あらかじめPCやスマートフォンにZoomをインストールの上、ご参加ください。https://zoom.us/
*質問タイムにはチャットにて議論にご参加いただけます。
*参加の方には終了後、録画URLをお知らせします。2週間の間何度でも視聴できます。
Lecture 2.
対談・他者へのまなざしを獲得するには
高山明×鷲尾和彦
見るものを引き込み、その世界に没入させるエンターテインメントがあふれる時代です。
わかりやすく一つになれる一体感こそが正義であるかのような傾向に、居心地の悪い思いをしている方も多いのではないでしょうか。
自分の正しさを疑わず、他者への想像力を欠くゆえの問題も増えてきている気がします。
高山明さんは、「演劇」を世界を二重化する装置と捉え、現実の都市の中に「客席」を持ち込むことによって、観客自らに「演劇」的視点を取り戻させるような試みを続けてきました。
一方、鷲尾和彦さんが昨年発表した『Station』は、ウィーン西駅で偶然遭遇した難民たちの姿をとらえた写真群と5年間向き合い続けるなかで、被写体が普遍化されていった結果、生まれた写真集です。
私たちはどうすれば社会への違和感や、他者への想像力を持ち続けられるのでしょうか。そして、芸術が果たす役割とは。
高山さんの著書『テアトロン—社会と演劇をつなぐもの』(河出書房新社)と鷲尾さんの写真集『Station』(夕書房)をテキストに、社会と接続しながら演劇と写真を拡張してきたお2人の対話の中から、ヒントを探ります。
日 時 2021年8月28日(土)
20:00-21:30
定 員 90名
参加費 クリックして購入ページへ
2)『Station』(3,960円→3,200円)+参加費(1300円)+夕書房通信=4,500円(税込)*送料無料
3)『テアトロン』(3,135円)+参加費(1300円)=4,435円(税込)*送料無料、限定10冊/8/22締め切り
講師プロフィール
高山 明 たかやま・あきら
1969年、埼玉県生まれ。演出家。ドイツでの演劇活動を経て、2002年より創作ユニット「Port B(ポルト・ビー)」を主宰。
「演劇とは何か」を根底に据え、実際の都市を舞台にツアー・パフォーマンス、社会実験プロジェクトなど、現実の社会に介入するプロジェクトを世界各地で展開している。
あいちトリエンナーレ2019では、電凸攻撃による「表現の不自由展・その後」展中止を受け、アーティストが電話対応する「Jアートコールセンター」を設立した。
近年では、美術、観光、文学、建築、都市リサーチといった異分野とのコラボレーションに活動の領域を拡げ、演劇的発想・思考によって様々なジャンルでの可能性の開拓に取り組んでいる。
撮影:奥祐司
鷲尾和彦 わしお・かずひこ
兵庫県生まれ。1997年より独学で写真を始める。
写真集に『Station』(夕書房、2020)、海外からのバックパッカーを捉えた『極東ホテル』(赤々舎、2009)、『遠い水平線 On The Horizon』(私家版、2012)、日本各地の海岸線の風景を写した『To The Sea』(赤々舎、2014)、共著に作家・池澤夏樹氏と東日本大震災発生直後から行った被災地のフィールドワークをまとめた書籍『春を恨んだりはしない』(中央公論新社)などがある。
BAck number 以下は終了した講座です
leCTURE 1.
緊急対談・東京オリンピック2020が教えてくれたこと
平尾 剛×青木真兵
東京オリンピック2020。これほど見事に、日本社会の問題点を次から次へと噴出させた事案は、これまでなかったのではないでしょうか。
トラブルに次ぐトラブル。そして、パンデミックの中、世界から非難を浴びてもなお開催に突き進む異様さは、この「平和の祭典」の欺瞞を象徴して余りあると感じます。
今回は、元アスリートの立場でありながら2017年より東京五輪の返上を訴えてきた平尾剛さんと、山村につくった人文知の拠点から東京五輪をめぐる顛末を観察してきた青木真兵さんに、「東京オリンピック2020」とは一体何であり、そこから見えてくる私たちの社会の課題とは何かを、赤裸々に語り合っていただきます。
オリンピック期間ど真ん中のこの日、私たちの国、日本が辿ってきた8年間を振り返ります。
日時 2021年7月28日(水)
20:00-21:30
*終了しました
定員 100名
参加費 クリックして購入ページへ
1)トークのみ 1500円(税込)
*PDFダウンロード
2)『彼岸の図書館』(2,200円)+参加費(1300円)+夕書房通信=3500円(税込)*送料無料
青木真兵 あおき・しんぺい
「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。
1983年生まれ。埼玉県浦和市に育つ。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。関西大学大学院博士課程後期課程修了。博士(文学)。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信がライフワーク。障害者の就労支援を行いながら、大学等で講師を務める。
著書に『彼岸の図書館—ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』(H.A.B)がある。奈良県東吉野村在住。