新しい過去
多様な民族とともに生きた人びとの気配に満ちている。石と水がつなぐ、2つの宮都にはじまる土地の記憶と記録。
奈良県の中央部に広がる飛鳥・藤原地域は、6世紀末〜8世紀初めの約100年間、飛鳥京と藤原京という2つの宮都が存在し、国づくりの礎が築かれた地です。
写真家・石川直樹は、2年間にわたってこの地をたびたび訪れ、ときには山の奥深くへと分け入りながら、古代の人びとの息遣いに耳を澄まし、現代まで続く営みの深部に迫るべく、撮影を繰り返してきました。
宮都にまつわる大きな史跡を辿る一方で、石川の視点は、まちのあちこちに残る不思議な石たち、豊富な水源、地元の祭祀に注がれます。
古墳時代から天皇を中心とした中央集権国家への転換という大きな歴史の流れと、多様な民族と混じり合いながら生きた市井の人びとの物語。両者を行き来する石川が出会った「新しい過去」とは。
写真を手がかりに現地を歩きたくなる、マップと年表(別刷)付きです。
飛鳥・藤原での撮影は、ぼくにとって過去の歴史を想像するための種を拾い集める行為であり、身体によって歴史を知覚していくかのような感覚がつねにあった--あとがきより

石川直樹写真集 飛鳥|藤原
解説 青柳正規、山田隆文
デザイン 田部井美奈
B5判変型/コデックススイス装
カラー/168頁/日英バイリンガル/【付録】地図・年表
本体5000円+税/2025年3月刊
ISBN 978-4-909179-12-8 C0072
PROFILE 著者プロフィール
石川直樹 いしかわ・なおき
1977年、東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。
人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。
2008年『NEW DIMENSION』『POLAR』で日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞、2011年『CORONA』で土門拳賞、2020年『EVEREST』『まれびと』で日本写真協会賞作家賞を受賞。2023年東川賞特別作家賞。著書に『最後の冒険家』(開高健ノンフィクション賞)ほか多数。
